
1.各界トップに聞く 講談社社長 野間省伸さん part1
《森GS-Ehon理事長》(以下 森)
本日は、株式会社講談社社長 野間省伸(のま よしのぶ)様にお目にかかり、お忙しいところ、ありがとうございます。野間様は読書推進運動協議会・会長のお顔もお持ちで、私たちがこの法人を立ち上げる当初から様々なご相談に乗っていただき、たくさんのご示唆をいただきました。本当にありがとうございました。心から感謝いたしています。

写真:野間省伸 講談社社長
❶ 117年の歴史ある講談社の新たな挑戦、講談社はこんな会社。
《森》早速ですが、昨年秋、野間省伸様が、ITイノベーションの中心地・シリコンバレーに乗り込んで、素晴らしいプレゼンテーションをされ、世界の情報メディア産業に新たな刺激を与えたというニュースをお聞きしました。どんなアイテムですか?
● ROBLOX オンライン・ゲーミング・プラットフォームでのライセンス処理
《野間省伸》(以下 野間) あぁ、ROBLOX(ロブロックス)の話ですね。実は、あの影響の大きさには、私自身が驚いています。全世界で約4億人の利用者がいて、デイリーアクティブユーザー(DAU)が1億6000万人以上もいる。しかもそのうち13歳以下の子どもが4割、なかには10歳くらいの子どももいて、彼らが、自らクリエイターになっていくのです。その規模の大きさに私の方がカルチャーショックを受けました。ROBLOXというのは、ユーザーが仮想空間上に自由にゲームをアップしたり、それを楽しんだりできる「ゲーム版ユーチューブ」ともいわれるものです。一方で、子どもたち自身に悪意はなくても、知らないうちに他の人のコンテンツから無断使用してしまうこともあり、海賊版が問題となっている昨今、子どもたちをそのような状況に巻き込ませたくはありません。そこで、私たちが認めた(提供する)使用可能なIPを、私たちの決めたルールに基づいて申請すれば、面倒な著作権処理をしなくても容易にゲームコンテンツが作れるようにしたのです(参考1、参考2)。このことによって、クリエイターはルールを守っていれば自由にコンテンツを作れるようになります。また、ゲームクリエイターだけでなく、オリジナルIPの権利者にもお金が入るようになるしくみを整えました。
《森》 私は今まで出版社はヒトが作ったものを売るだけの仕事だと思っていましたが、この話を聞いた時、講談社はついに、人にモノを作らせて売る仕事、製造業にまで発展したかと思いましたよ。
《野間》 いやいや、製造業ではありませんけれども、出版社は昔から才能をクリエイトする仕事をしてきています。出版社の編集者たちの仕事の醍醐味は、新たな才能を発掘し、その才能がクリエイトする仕事をお手伝いすることにあります。ROBLOXでのライセンスは、正にその延長線上にあるものです。
● ハリウッドに新たに映画制作会社を設立
《森》 昨年暮れには、もう一つビックニュースが飛び込んできました。アメリカに映画制作会社を新設されたとか・・。
《野間》 ハリウッドに設立した「Kodansha Studios」ですね。この会社は日本の漫画、児童書・小説を原作とした映画を作ることが目的の会社です。従来は我々が原作を持つ映画制作を北米の現地企業に預けていたのですが、時間が掛かってなかなか実現せず、塩漬けになってしまうということもあったので、自ら新会社を設立したのです。アカデミー賞の監督賞等3部門の受賞作「ノマドランド」の脚本・監督を務めたクロエ・ジャオさんと、プロデューサーのニコラス・ゴンダさんと組んだ新会社です。クロエ・ジャオさんの就任に当たっては、先方から100の質問をしたいと言われ面談しました。3時間経っても面談の部屋から二人が出てこないのでスタッフが心配して見に来たら、まだ半分も質問が終わっていなかった。それほど私とクロエさんは話が盛り上がりました。意気投合して、クロエさんは喜んでKodansha StudiosのCCO(最高クリエイティブ責任者)に就任してくれることになったのです。まだ作品名は公開できませんが、すでに数本の映画制作の話を進めています。すべて、講談社の手掛けてきた小説や漫画の映画化です。講談社は、昔から「おもしろくて、ためになる」を会社の方針としてきましたが、新しいビジネスを始めるときも「おもしろいかどうか」が大事な判断基準です。
● 新たに定めたパーパス「Inspire Impossible Stories」
《野間》 講談社は2021年に社として正式なロゴを初めて作り、「Inspire Impossible Stories」というパーパスを発表して、新たな次元のグローバル展開を打ち出しました。かねてから「おもしろくて、ためになる」をどうやって英語で表現しようか思案していましたが、「Inspire Impossible Stories」というパーパスは、私たちが海外に向かってビジネスを行うにあたって講談社の思想をうまく表現できていると思っています。特に「Impossible」(あり得ない)という言葉に興味をひかれませんか? これまで語られたことのない物語、作品、感動を日本だけでなく世界中に届けていきたいと思っています。
《森》 日本の出版界をリードし続けてきた講談社が、グローバル化時代の今、全世界に向かって日本発文化産業を全面展開される姿を頼もしく感じます。(Part2は次号で)
2.GS-Ehon第3回茶話会 “海”をテーマに開催される

● GS-Ehon第3回茶話会「海と絵本とわたし 道田豊先生を囲んで」開催
2026年2月28日(土)(13:30-17:00)に東京、大手町の日経会館6階セミナールームで「グローバルサウスと絵本とサイエンスを考える会」が開催されました。
今回の茶話会は、絵本図書館ネットワークと共催で開催し、GS-Ehonとしては初めて会場開催とOnline開催を併用するハイブッリド方式で開催しました。会場参加54名、Online接続は36カ所で、うちサテライト会場が2カ所であり、合計100人近い参加申込となりました。また、国立青少年教育振興機構の“子どもゆめ基金”の助成金の支援も得て開催されました。
●セッションは、ゲストスピーカーに道田豊さん(東京大学総長特使・大気海洋研究所特任教授・ユネスコ政府間海洋学委員会議長)を、トークパートナーに井上みほ子さん(瑞雲舎代表)・祓川摩有さん(聖徳大学児童学科教授)・横田英彦さん(公立図書館長)を迎え、多様なトークセッションが行われました。道田豊さんはケガのため急遽Onlineで参加しました。
(みなさんの紹介はこちら→https://gs-ehon.org/web/newsletter-7/)
● 道田豊さんからは、海洋と海洋の変化がもたらす影響について、“関東在住の高校生が海に放したビン詰め手紙が20年近くを経て鹿児島の離島に漂着し、それが両県の高校生の交流につながる逸話”、及び東西地球・南北地球の大きな海洋図に基づいて、時間軸と空間軸の両面から海の実態について興味深い話が紹介されました。また、海に関わる絵本について『10このちいさなおもちゃのあひる』(エリック・カール 2005,偕成社)と『たっぷどこへいく』(アンナ・ベングトソン 2005,福音館書店)が紹介されました。

● トークパートナーからは、絵本出版や図書館運営、管理栄養士としての食育指導にかかる経験からなど、多様な観点から海とのかかわりについて、実体験に基づくトークがありました。
● トークパートナーとゲストスピーカーとのトークセッション、スピーカーたちと会場及びOnlineの参加者とのトークセッションでは、多種多様な視点や経験に基づき、かつサイエンスの眼からの洞察や示唆に富んだトークが繰り広げられました。

写真:左から(スクリーン:道田豊さん)(机席:井上みほ子・祓川摩有・横田英彦のみなさん)(立っている人:ファシリテーター森茜理事長)
・約6,500年―6,000年前にピークだったとされる温暖化による海の水準の上昇(いわゆる縄文海進)の地球の歴史的実態に鑑み、現在の温暖化に伴うこれからの地球の問題が、私たちの日常に照らしてトークされました。
・海の海産物と食育に関するトークでは、“食べることが好きになる子どもを育てることの大切さ”を絵本を通して再認識しました。
・黒潮の蛇行の変動がいつまで続くのかということに関して、約8年続いた黒潮大蛇行は昨年終了し、蛇行前の状態にモドリましたので、モドリカツオを美味しくいただけるかも、と喜びました。
・環境保全に関し、マンション住民の参加者から、人々の文化や経験の多様化に伴い、犬の糞の始末にさえままならない状況であるのにどうしたらよいか、との発言があり、道田さんから「海の環境保全については、UNEP(国連環境計画)が中心となって、プラスチック条約の政府間交渉が進められており、いつになるかはわからないが、何らかの国際的な指針を出すようであるので注視してほしいこと、しかしまずは、各自が自分の周りで考え方を共有することを一つ々々積み重ねていってほしいとの発言がありました。
・また、“海の魅力”をどう考えるかについては、一人々々のヒトが、それぞれの感性と、それぞれの経験と、それぞれの関心によって、海の捉え方は異なるものであり、ヒトそれぞれが異なる魅力を感じることができることが、海の大きな魅力である、と、道田さんは考えていることが紹介されました。
・Onlineサテライト参加のめいまい図書室からも活発な意見が出されました。

写真:大型スクリーン:めいまい図書室の参加の皆さん
● 仕掛け絵本のトークセッション
・Onlineサテライト参加の静岡芸術文科大学かわこうせい教授の紹介で、4人の学生たちが作成した仕掛け絵本について、Onlineの画面越しに絵本トークをしてくれました。学生たちによる自作仕掛け絵本の特徴やその仕掛けによって伝えたいことなどがフレッシュな感覚で紹介され、トーク会場に爽やかな風が吹きました。
・学生さんたちが、この仕掛け絵本を“ガーナの子どもに絵本を贈ろうプロジェクト”の一環として寄贈してくれるとのことで、GS-Ehonの森茜理事長より、感謝状が贈られました。

写真:静岡芸術文化大学の かわこうせい先生と学生のみなさん
● GS-Ehon探検隊の絵本トーク
・GS-Ehonでは、昨年12月理事会で、調査研究活動の一環として絵本について調査探索するために会員による「GS-Ehon探検隊」が設置され、片山ふみ専務理事を隊長に5人の絵本にかかわる仕事をしている会員が隊員になりました。
・GS-Ehon探検隊によって“海”に関わる絵本が探索され、そのうちの8冊について、探検隊員より絵本トークが行われました。GS-Ehon探検隊による“海”の絵本の捉え方は、いわゆる科学絵本ではなく、海を見る時の視点や態度・考え方などにかかわるものを多角的な視点でとらえていくところに、特徴がありました。

● 懇親会を開催しました
茶話会終了後には近くの料理店で懇親会が開催され30人が参加し、グローバルサウスの子どもたちに絵本を贈るプロジェクトを通して、世界の子どもや人々が地球への思いを深め、相互の親交を強めました。

3.会員活動一行ニュース
●理事 萬歳寛之が「海洋法」(2024年8月30日発行 信山社)「概説国際法」(2024年12月17日発行 有斐閣)に編著者として参加しています。
●専務理事 片山ふみが「司書教諭テキストシリーズⅡ 読書と豊かな人間性」(2026年2月24日発行 樹村房)に分担執筆で参加しました。
●理事 萬歳寛之が韓国国立外交院との研究会に出席します。(2026年3月4~8日)
●理事長 森茜が 公財)矯正協会の理事会に出席します。(2026年3月11日)
●理事長 森茜が 公社)日本図書館協会代議員総会に顧問として出席します。(2026年3月12日)
●常務理事 片山ふみが 「シンポジウム『読書と豊かな人間性』の授業内容と指導法の検討」で報告します(2026年3月15日 @立教大学池袋キャンパス)
●会員札幌アライアンス:武井昭也が横浜市栄公会堂「音のある朗読会」(2026年3月21日)で絵本の朗読をします。

[webサイト]https://gs-ehon.org/web/
[代表者] 森 茜 (もり あかね)
[事務所] 東京都狛江市岩戸南2-13-13
[問い合わせ先]globalsouth.ehon [at] gmail.com
※メールを送る際は[at]を@に変えて宛先のアドレスとしてください。
